top of page

世の中理不尽な事ばかり 勤め先も恋も天気雨も

雨宿りがてら安く光る看板に逃げるように駆け込む

 

「席へどうぞ、温かいお絞りです」

今日から逸らした目は品書きに

 

夜が明けるまで話そうか

慰め酒もたまにはいいでしょう?

さあ呑んで笑って飲まれて寝て

献酌も懐古も花みたいなもん

とりあえず本日もお疲れさん

 

暖簾を越え浮かない顔で座り

粗末なお通しに一瞥をくれ

「おすすめの酒を冷やで頼む」

店員は黙ってグラスを渡す

 

「うちの上司ほんとに使えなくってさ

俺の残業が傘増すばっかり」

 

「お客さん、毎日大変ね」

そう言ってアンタは上手に笑う

 

「わかってくれるかい?なんか少し

救われた気がするよ ありがとう」

 

「とりあえず本日もお疲れさん」

「ああいつもありがとう、では、乾杯」

 

満月の下で千鳥歩く 赤ら顔で明日を想って歩く

ああ、こんな日暮らしよ 酔寂よ

唐松に徒花を咲かそうか また花金、酌でも交わそうか

bottom of page